ようこそ「Tokyo Chitlin' Circuit」へ!


ファンクバンドFREEFUNKと音楽ライター池上尚志が共同で主催をするライブイベント「Tokyo Chitlin' Circuit」にようこそ!
Funk/Soul/Blues/Jazzなどをルーツミュージックに活躍するアーティストを広く紹介していきます。

2011年9月15日木曜日

ミトカツユキさんインタビュー

 さて、イベントを明後日に控えとギリギリのタイミングになってしまったが、ゲストのミトカツユキさんのインタビューをご紹介しよう。そのファンキーな人柄と音楽性などが伝わると思う。



 「Tokyo Chitlin Circuit」第4回目のゲストは、ピアノで歌うソウルマン、ミトカツユキさん。ピアノを弾きながらソウルフルに歌うシンガーソングライターだが、アッパーな曲はファンキーに、スローではゴスペル風の荘厳さでと、自然とブラックミュージックのフィーリングが滲み出てしまう、根っからファンキーなアーティストだ。



 ミトさんは1978年生まれの現在33歳。2004年に「KAGERO」インディーズデビュー。2007年には「39」でメジャーデビューを果たす。現在は「毛蟹ソウル」という自らのレーベルを立ち上げ、ソロ活動のほか、様々なアーティストのサポート、アレンジの仕事までをこなす忙しい毎日である。


 北海道出身。音楽を始めたきっかけは4歳の頃に始めたエレクトーンで、中学の始めまで習っていたという。中学時代にロックを聞き始めると、ギターを弾き始め、ヘヴィメタルの道へ。このときはギタリストになりたかったというが、ブラック・ミュージックの洗礼を受けると、ファンキーなサウンドへ一直線。ここにソウルマン、ミトカツユキが誕生。18歳の時だ。

「ラジオから流れてきたEarth,Wind & Fireの「SEPTEMBER」を聞いてブラックミュージックにのめり込んだんです。最初はアースをひたすら聞いてましたが、ちょうどその頃にNeo Soul(New Classical Soul)のアーティストも増えてきて、Eric BenetやMaxwell、D'angeloなんかも聞いてましたね」


 高校を卒業すると専門学校に進学し、学校の友達とバンドを結成。アースのカヴァーなどと共にオリジナル曲もやり始める。オリジナル曲はすでに中学生の頃から作っていたというが、今となっては「恥ずかしくて聞かせられまへん(笑)」というようなものらしい。20歳になる頃には、音楽を生業とし、ススキノで札幌在住の黒人ミュージシャンと共に演奏をし歌う日々。その中で、もっとたくさんの人に自分の歌を聴いてもらいたいと、上京を決意。そしてプロの道へ。

「ススキノのバーで黒人さんと一緒に歌うようになってから「フリー」な世界観に惹かれました。普通に歌うのではなく自分なりのスタイル、フレーズなどを使って歌う、どこかエレクトーンのアレンジ即興に似た所があり、好きになったような気がしますね。この頃はソウルの曲をたくさんカバーしてました。モータウン系が多かったかもしれません」


 当時のシーンには既にブラック・ミュージックを指標としたサウンドを看板としたアーティストはたくさんいたのだが、その多くはシンガーであり、ピアノを弾きながら歌う人は少なかったように思う。

「シンガーとして影響を受けたのはやっぱりダニー・ハザウェイかなぁ。言葉ではうまく表現できないんですが、どこか土臭い感じというか、血を声から感じさせてくれるんですよね。僕が一番大事だと思う「リズム」が完璧な人だと思います。日本だと久保田利伸さん、中西圭三さん、女性だと山本潤子さんが大好きです。久保田さん、中西さんはあのリズム感、山本潤子さんは日本で一番声が好きな女性シンガーです。ピアニストとしてはジョージ・デュークですね。色んなジャンルに挑戦していたり、彼の繊細かつ野生的なフレーズが大好きで、自分のキーボードソロで参考にすることも多いです。楽曲面においてはスティービーワンダーです。ボーカリストとしてもすごく尊敬する方ですが、トータルですごいなと思います。なんでそのコードにいくの!?的な転調が随所に張り巡らされているんだけど、全然マニアックに聞こえない。むしろキャッチーに聞こえてしまう。彼の魔法ですよね」

 さらに、実はさだまさしさんが好きだと言う意外な発言も。ソウルとはあまり縁がない人だが、楽曲のキャッチーさと人間味あふれる歌詞の世界観に憧れるという。こんなところに、ソウルだけでなく、音楽をトータルで見る目が隠されているといえるだろう。


 ミトさんはピアノ・プレイヤーとしても、個性的な演奏を聴かせてくれるが、繊細さよりも躍動感、ライヴ感を重視するタイプ。特にライヴ活動が好きというだけあって、リズムだけは絶対譲れないポイントだという。日本人のソウル系のプレイヤーは細かな16ビートを得意とするタイプが多いが、ミトさんは豪快に大きなフィーリングでグルーヴを作って行くタイプ。その場を開放的でハッピーな空気を満たしてくれる。そういう意味ではゴスペルとも共通するような感覚といってもいいだろう。しかし、日本人がブラック・ミュージックのフィーリングを取り入れようとするとき、リズム、ヴォーカル等、様々な壁にぶち当たることも多い。ミトさんはそういうことはなかったのだろうか。

「そんなに苦労したとは思いませんでしたね。好きでのめり込んだ頃は若かったから、アホみたいに何度も歌の真似をしてみたり、フェイクの練習してみたり、もうやだ~~~!!って思った事は一度もありません」


 ミトさんに、ぜひこれを聴いておけという作品を教えてくれと、自らの影響やエッセンスを伝えるようなソウル/ファンク系のアーティストの作品をあげてもらおうかと思ったのだが、僕の説明の仕方が悪かったようで、自らのオリジナル曲の中から選んでくれたので、ここで紹介しておこう。残念ながら僕も全部聴けているわけではないので、断片的な紹介になるのを失礼させていただく。

「Bad」
2005年にリリースされた1stアルバム「Natural Soul」からの曲。

「Crew on the Earth」
2007年のメジャーデビュー作品「39」に収録された曲。アッパーでファンキーなナンバーだ。

「Musiqism」
昨年リリースされたアルバム「ミスター晴れ男」からのオープニング・ナンバー。

「LIFE」
これも「ミスター晴れ男」に収録。スケールの大きなゴスペルタッチのナンバーで、ハレルヤ・シスターズのコーラスをフィーチャー。Youtubeに音源があったのでリンクしておく。ぜひ1度聴いてもらいたい名曲だ。
http://www.youtube.com/watch?v=Sd3GcYL-viM


さて、サポート活動の中で目を引くのが、ナオト・インティライミさんとの活動だ。近年大ブレイクを果たしたナオトさんだが、それ以前からの仲だという。
「もともとは5、6年前くらいにライブで対バンになった事がきっかけで、聞いてきた音楽も似てる所から、意気投合して仲良くなりました。去年から僕が「フリーで活動するんだ~~。」ってあけおめメールしたら、バックでキーボードとか弾くのってあり?ってメールが来て、サポートをすることになりました。彼の音楽は聞いてても楽しいけど、プレイするとその楽しさが倍増しますね」

 自らの活動を
「幅広く"音楽"を楽しんでる感じ」というミトさん。その活動信念とは。

「何を伝えたいかって言うのは、その都度、生きていく中で 変わっていくとは思うんだけど、「ありがとう」と「ハッピー」をぶれずに変わらず伝えていけるアーティストになりたいと思ってます」


 最後に、「Tokyo Chitlin' Circuit」というイベント についてコメントをいただいた。実は、ゲストがいちばんこき使われるという噂があることを、ミトさんはまだ知らない(笑)

「自分の好きなソウル・ミュージックが大好きな人間がこんなにいるんだって思うとワックワクします。ライブでしか味わえない「血や汗」をぜひ体感しにきてください!!」

 そう。「Tokyo Chitlin' Circuit」は、表現の形こそいろいろだが、本当にソウルやファンクなどが大好きな人たちが集まったイベント。そこではきっとまたソウル好き同士の化学反応が起きるに違いない。やる側は本気で楽しんじゃってるので、見に来てくれる皆さんも、負けずに楽しんじゃってくださいね!


TEXT:池上尚志


0 件のコメント:

コメントを投稿